庭の計画(プランニング)を立てる立てるために必要な基礎知識

あなたは家を建てようと決めた時から資金計画をはじめ、ハウスメーカー選びや外観、間取り、インテリアなど念入りに計画を立てるでしょう。

庭の計画(プランニング)についても、家の計画と同時に(並行して)たてる必要があります。そうでないと、柔軟なデザインやレイアウトが出来なくなり、使い勝手の悪い庭になる可能性があります。また、無駄な作業やコストが発生することも少なくありません。例えば、門や階段として最適な位置に汚水桝や水道メーターがあったり、駐車場スペースの配管(水道、排水、ガス管など)が深く埋めてなかったり、駐車スペースの面積が充分取れなど予期しないことが発生することがあります。

このページでは、後で後悔しないために、庭の計画(プランニング)に必要な基礎知識と計画の立て方を説明します。

Contents

外構(エクステリア)の計画(プランニング)のための基礎知識

庭をつくる上で必要なもの「構成要素」を知ろう

庭の構成要素には、以下の物があります。

門まわり 門柱、門扉、表札、インターホン、ポスト、照明等
アプローチ 舗装、照明等
駐車場 舗装、カーポート、ゲート、引き戸、散水栓、照明等
サービスヤード 物置、物干し、水栓柱等
主庭 植栽、芝、ウッドデッキ、テラス、散水栓等
外周 ブロック、フェンス、生け垣等

これらの構成要素をうまく組み合わせることによって、見栄えがよく使い勝手の良い庭を作ることが出来ます。

庭の計画を立てる上で最も重要な、ゾーニング(導線、配置)計画を立てる

ゾーニング計画とは、簡単にいえば人の動きを考え敷地内のどこに建物を配置するのか、そのまわりのどこに庭の要素を配置していくのかを決めることを言います。

ここで重要なのは、道路はどちら側に面しているのか、高低差(道路と敷地の高さの差)はどれくらいあるのかなど敷地の状態を知ることです。

道路が南に面している場合は、門まわりや駐車場は南側に配置しその奥が主庭となり、その奥が建物という配置になります。道路が北側に面している場合は、門まわりや駐車場は北側に配置することになり主庭は南側が一般的です。

ここで気をつけなければならないことは、駐車スペースの大きさです。

一般的な乗用車のサイズは5メートルです。したがって駐車場の奥行きが5メートルきっちりでは車が道路にはみ出てしまいます。余裕を持って駐車するには最低5.5メートル必要です。クローズタイプの駐車場にする場合(シャッターやゲートを取り付ける場合)には、さらに奥行きが必要になります。ここで十分な計画を立てないで、余裕を持って駐車場の奥行きをとると、反対側である南側の主庭のスペースが少なくなり、「ウッドデッキが付けたかった」「芝生でバーベキューがしたかった」と本来庭でしたかったことが出来ないなど、後悔することも少なくありません。

逆に、主庭のスペースを十分に取り過ぎてしまうと駐車スペースにしわ寄せが来て、駐車するのが困難になるというケースもおこります。

次に考えなければならないのは、どんな敷地でも高低差があるということです。高低差があるということは、階段やスロープが必要だということです。

高低差が大きくなるにつれ階段の段数が多く必要であり、面積も多く必要になります。これも素人では、なかなか気付かない部分です。十分な面積が取れないと階段の蹴上げ(階段一段の高さ)を、高くしなければ収まらなくなってしまいます。階段の蹴上げが高いのは、毎日の昇り降りにはかなり負担になります。毎日通る場所なので、楽に登り降り出来る階段である必要があります。

そこで、後悔しないためにも、家の計画と並行して信頼できる造園・外構業者とじっくり話し合い、家の配置を含めた庭の計画を立てる必要があります。造園・外構業者は庭つくりのプロで豊富な経験をしており、素人や建築業者が気付かないような落とし穴やポイントよく知っていますからきっと良い計画が立てられるでしょう。

次に動線(人の動き)について考える必要があります。

  • 駐車場へはスムーズに行き来出来るか
  • 来客の動線はスムーズで物干し場やゴミ置き場が視界に入らないか
  • 洗濯ものはどこに干すのか
  • 物置はどこに置いたら使い勝手が良いのか
  • ゴミ出しはどう行うか

など日常生活の人の動きを考えた計画を立てれば日々の生活でストレスを感じることもなくなります。

ゾーニング計画の優先順位

1.駐車スペース:敷地の条件と所有する車のサイズを把握することが必要

2.アプローチ:門から玄関までの通路。奥行きを感じさせ歩きやすいのが大切

3.門まわり:「家の顔」とも言われるところ。機能的で建物と調和し、デザインを重視したい

4.主庭:ここで何がしたいのかを明確にする必要がある

5.サービスヤード:生活に必要なスペース。使い勝手がよい配置が必要

6.その他植栽:植物は癒やしを与えてくれるもの。その場所に適した植物を植える計画を立てましょう

建物との一体感を持たせたスタイルを選ぼう

庭のスタイルには大きく分けて、オープンタイプクローズドタイプの2つに分けられます。さらに、その中間でオープンタイプとグローズドタイプを組み合わせた、セミオープンタイプがあります。

 

オープンタイプ

 

グローズドタイプ

オープンタイプ、クローズドタイプには、それぞれに「メリット」と「デメリット」があります。これらのスタイルから、あなたに合ったスタイルを選んで庭のプランを考えていきましょう。

オープンタイプ

一般的に「オープンタイプ」といわれるスタイルは、道路に面した部分に門扉や塀を設けない開放的なタイプで、欧米で多く見られるタイプです。日本でも住宅の洋風化やライフスタイルの変化、そして限られた敷地を有効に利用したいという要望から、近年ではオープンタイプの庭が増えてきました。

オープン外構のメリットは、開放的で狭い敷地でも広く有効に利用することが出来、日当たりが良く風通しも良いことが挙げられます。また、門扉や塀を設けないため低コストで施工が可能であることです。

デメリットとしては、道路面に塀や囲いが無いため通行人から覗かれたり視線を感じたり、プライバシーの確保が出来ないことです。また、誰でも敷地内に侵入でき防犯性が低いことが挙げられます。

セミオープンタイプ

オープンタイプとクローズドタイプのそれぞれのメリットを組み合わせたスタイルが、「セミクローズドタイプ」と呼ばれるものです。門扉や塀、フェンスで一部は囲うももの敷地を完全に閉じないのがポイントです。
門まわりや隣地との境界は閉鎖的に、駐車スペースは開放的にした、オープンなエリアとクローズドなエリアを併せ持つプライバシー性と防犯性の両方を兼ね備えたタイプといえます。

クローズドタイプ

門や塀、生垣、フェンスなどで敷地を囲い外部からの視線を遮断したスタイルを「クローズドタイプ」といいます。

その昔、「門はその家の顔」「門構えが立派な家はお金持ち」と言われ、立派な門や塀を設けている家が多くありました。そのほとんどがクローズドタイプの門まわりです。

クローズド外構のメリットは、外周が囲われているため外部からの視線を意識することなく過ごすことが可能で、プライバシーを確保できることです。また、比較的高い塀やフェンスで囲まれているため、子供やペットが道路に飛び出す心配が少なく、セールスなどが敷地内に立ち入る事も阻止できます。

他にも門扉やブロック、レンガなど使用する材料にこだわりを持って施工すれば他との差別化がはかれ、住人のセンスや個性を表現でき、ステイタスの高さを感じさせることが出来ます。

クローズド外構のデメリットは、外部からの目が届かない分、不審者のターゲットになりやすい事です。また、多くの資材を必要とするため、コストが多くかかってしまうことです。

周辺環境や希望する暮らし方、建物によって庭のスタイルは大きく変わってきます。スタイルの名称にこだわらず、建物との一体感を持たせると同時に、近隣や街全体に溶け込むように配慮しながらあなたに合った庭のスタイルを決めましょう。

駐車場の位置・広さを決めるために知っておくこと

車を所有していれば必ず駐車スペースは必用です。しかし、駐車場の計画を軽視する方が多くみえます。毎日利用する駐車場なので出入りがしやすく、乗り降りが容易で玄関までの導線がスムーズでなければいけません。敷地の現状や、所有している車の大きさを考慮し駐車場の計画を立てましょう。

車の大きさを知る

一般的な乗用車の寸法(長さ)は約5メートルといわれてきましたが、近年は大型車のサイズは大きくなり、逆にコンパクトカーの需要が多くなりました。

あまり意識はされてないようですが、駐車スペースは意外に広いスペースが必要で、車種や保有台数によって駐車スペースの広さが変わってきます。

車のサイズを知る

全 長 全 幅 全 高 車 種
軽自動車 3400 1580 1530(1670) ミラ、タント、ハスラー、N-BOX,アルト等
コンパクトカー 4000 1700 1530 フィット、ヴィッツ、デミオ、イグニス、マーチ等
小型車 4800 1750 1500 プリウス、カローラ、カムリ、アコード等
中型車 5000 1850 1500 マークX、クラウン、フーガ、レジェンド等
ワンボックス 4850 1820 1910 エルグランド、アルファード、エスティマ等
大型車 5300 1900 1500 レクサス、ベンツ、マセラティ等

(単位:mm)

車種によってこれだけサイズに違いがあります。そのため、どんな車に乗るかによって駐車スペースに必要な広さは全く違ってきます。「私は、軽自動車しか乗らないから軽自動車が止められるスペースだけあればいい」と最小の面積で車庫を造ったのに、後になって「やっぱり普通乗用車に乗り換える」となった場合、車が道路にはみ出てしまうばかりか、車庫証明が取れず普通乗用車が購入出来ないことにもなりかねません。
まずは、所有している車のサイズとともに、いずれ購入する可能性のある車のサイズを把握することが大切です。

駐車スペースのサイズ(広さ)を決める

一般的に、駐車スペースの取り方には道路に対し直角に取る方法(直角駐車)と、縦列に取る方法(縦列駐車)の2種類があります。

 

一般的にいわれる駐車スペースの大きさは、上図のようになります。ハウスメーカーに車1台分の駐車スペースが必要と言えば、図のようなサイズで提案してくるでしょう。しかし、このサイズは大型車でも充分に停められるサイズです。敷地が広い場合は問題無いでしょうが、そうでない場合は無駄なスペースは取りたくないものです。そのためにも、自分の所有している車や今後購入する可能性のある車のサイズを把握しておく必要があります。

道路に対し直角に駐車場を取る場合

前面道路の幅員と1台が直角駐車するのに必要な間口(中型車の場合)

全面道路幅員(メートル) 4 5 6 7
車庫間口 前進で駐車する場合 3.6 3.3 3.3 3.0
後退で駐車する場合 3.3 2.6 2.3

(単位:m)

上記は、車が駐車場に入庫するのに必要な寸法です。乗り降りを考えた場合は以下の寸法を確保するべきでしょう。たとえば、前面道路が6メートルで後退で駐車する場合2.3メートルあれば駐車出来ますがこの寸歩では十分にドアをあけることは出来ません。

 
    駐車スペースの基本寸法です。
ドアの開閉と人が通ることを考えて、駐車スペースの幅を設定するとよいでしょう。

 

     十分な間口寸法が取れない場合、隅切りを取る事により車の出し入れが容易になります。

道路に対し縦列に取る場合

道路面に対して大きな開口部が必用になります。開口部は7メートルから8メートル必用です。開口部が広く必要なため一般的には、オープン外構として利用されています。間口は運転席が道路側か建物側かで寸法を変えたほうがいいでしょう。一般には、2メートル50センチから3メートルとされています。

アプローチのパターンを決める

アプローチとは、門から玄関までの通路のことを言います。訪問客が必ず通る場所で、家族は每日通る場所ですから歩きやすいことが大切です。また、訪問者が始めに目に入る場所なのでデザイン性も考慮して計画を立てましょう。幅は、敷地の広さにもよりますが、1メートルから1.5メートルが適当です。

アプローチのパターンは、直線タイプ、曲線タイプ、直角タイプがあります。

 

直線タイプ

門から玄関まで直線でつないだ通路です。

訪問者の視線が、直接玄関に向くのであまり好まれません。

重厚感のある門構えのデザインには向いています。

曲線タイプ(S字タイプ)

曲線が柔らかな印象を与えます。

直角タイプ(クランクタイプ)

目隠しに効果があり奥行きを感じさせます。

門まわりは住まいの顔

住まいの第一印象を決めるのが、門まわりといっていいでしょう。訪問者が最初に目にする場所であり、通行人誰もが目にする場所です。デザインひとつで住まいの印象が変わるといっても大げさではありません。機能を含めデザインも重視して計画を立てましょう。

門まわりに必用なもの

オープンタイプ、クローズドタイプにかかわらず、表札、インターホン、ポスト、照明を備えた門柱は必用でしょう。

「すべて玄関にあるから必要ない」と思われがちですが、セールスマンやポスティング、新聞配達員や郵便屋さんなど、どんな人でも敷地に入り込み玄関まで来ることが出来るため、防犯が低く人の視線を感じることが大きなストレスになります。したがって、どの庭のパターンであっても道路に近い位置にデザイン性のある門柱を配置することで、一旦他人を止める事ができます。クローズドタイプでは門扉を取り付ける事により外部と遮断され、プライベートな空間を守ることが出来ます。

門まわりのデザイン

門まわりのデザインをする上で大切なことは、建物と調和を取ることです。たとえば、和風の建物に対して洋風の門まわりにしたり、「個性的な門がいい」とあまりにも奇抜な作りにしたりしてしまうと違和感を感じてしまいます。「和風の建物には和風」、「洋風の建物には洋風」とプランニングすれば統一感が出て自然な感じになります。

また、門柱は建物と同系色にすると違和感のない門まわりになります。

 

オープンタイプ

 

セミクローズド・クローズドタイプ

門まわりは、一番人目に付く場所です。違和感がなく個性的なものにするために、あなたの要望を聞き入れてくれて、理想のイメージを作り上げてくれる業者を選別していかなければなりません。

主庭で何がしたいのか

主庭というと、石が置いてありたくさんの植木が植えてある場所をイメージする人が多いようですが、ここは住人がしたいことをする場所なのです。主庭は、リビングやダイニング等に面したその敷地の中心となる部分で、庭の中で一番広いスペースになります。

ここであなたは本当に何をしたいのか? 主庭は、それを実現する場所なのです。

真剣に考えて見て下さい。

例えば、眺めて癒しを得る、自ら草花を植えて楽しむ、家庭菜園をする、子どもと遊ぶ、ゴルフの練習をする、バーベキューをする、犬を飼う、のんびり読書やお茶をするなど理想があるはずです。これを明確にしてプランニングすることで、主庭に何が必要なのか、外周やサービスヤードに何が必用かもわかってきます。

サービスヤードを考える

サービスヤードとは、生活するのに必要な屋外の家事をする場所や収納のスペースのことを言います。例えば、洗濯物干し場、ガーデニング用品やペットの散歩用品などの収納場所(物置)、収集日までのゴミの保管場所、灯油のポリタンク置き場などです。

庭ですることが明確になればそれに使用する道具、例えばガーデニングに使う道具やバーベキューセット、ゴルフクラブなどの収納場所、また家の中に置いておけない回収までのゴミ袋や資源ごみ、灯油缶などの収納スペースを考えなければなりません。

また、忘れがちなのが「洗濯物干し場」です。外部から目につきにくく、日当たりがよく勝手口からの使い勝手の良い場所を前もって物干し場の場所として抑えて置く必要があります。

このように庭の構成要素を十分に検討し、理想の庭になるようプランニングをし他にはない、あなただけの庭を作り上げて下さい。

 

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